今年度四街道市で「タッチですこやか脳チェック」事業を開始されていますが、始められたきっかけと事業の概要を教えてください。
四街道市ではJAGES(日本老年学的評価研究機構)と共同で実施した、「健康とくらしの調査」で社会的役割などの様々な分析を行った結果「これから認知機能が低下するリスクのある人が多い」ことがみえてきました。
この結果をもとに、昨年度までは新型コロナウイルスの影響もあり、電話を活用した認知機能チェック事業を行っていましたが、外出機会を作りたい想いから、対面での事業に切り替えを検討していたときに、「のうKNOW」を知り、導入することにしました。
この事業では「のうKNOW」を受けていただく際、看護師も同席してチェックを進めています。チェック後は結果を一緒に見たり、日常生活の困りごとを聞くなど、その場で相談を受けられるようにしています。単にチェックするだけでなく、不安なことがあればその場で相談し、市の様々なサービスに紹介できることはこの事業の特徴です。チェックだけでは不安に思うかもしれませんが、その後のフォローも併せて行っています。
※「のうKNOW」は疾病の予防や診断を目的としたものではありません。
普段、住民の方から、もの忘れや認知機能に不安を覚え、ご相談を受けるケースはありますか?
介護している側の方から「自分自身のもの忘れが不安だ」と相談を受けます。その場合は高齢によるもの忘れと、認知症によるもの忘れの違いを説明し、必要であれば地域包括支援センターを紹介しています。またご本人が直接来られるケースと、ご家族が相談に来るケースもあります。
ただその場合は、既に認知機能の低下が進んでいるケースが多いと感じます。ご本人やご家族が認知症を認めたくない、人に知られたくない、そういった気持ちがあり、少し進んでから来られるケースが多いのかなと思います。認知症が進行する前に、何かきっかけがあれば私たちもご本人やご家族と繋がれるのですが...。
そういった意味では対面で実施しているこの事業がきっかけになることを期待しています。
「タッチですこやか脳チェック」事業を行うことで、どのような成果を期待されますか?
元々健康増進課にいて健診事業などに携わっていたので、身体に健診が必要なように、脳や認知機能も健診と同じく気軽にチェックを受けてもらうことを期待しています。
チェックを受けて気になる方は予防的な講座に参加してほしいです。逆に受けて問題ないような方には予防法について理解してもらい、自分や周りが不安になったとき、どこに相談すればいいか、健康なうちから知ってもらいたいと思っています。
このような機会に参加する方は、認知症に興味・関心をもっている方だと思います。そのため、問題なさそうな方には支える側に回ってもらえるよう、認知症サポーターの案内もしています。ご案内するときは「認知症になっても、みんなで支え合って暮らしていける四街道市を目指しています」とお伝えし、サポーター養成講座にご理解いただいています。
「タッチですこやか脳チェック」事業の応募状況や反響を教えていただけますか?
正直こんなに反応が良いと思いませんでした。案内は市政だよりだけでしたがすぐに予約が埋まりました。初日に定員に達し、キャンセル待ちもでて、2回目の実施も募集初日に定員に達し、キャンセル待ちが発生しました。キャンセル待ちの枠も定員に達した状況です。改めて市民の興味や関心の高さを感じました。
定員に達した要因は、対面で個別実施ができることも影響を与えているのかなと感じています。以前から20名ほどの集団検査も実施しているのですが、実は今年の集まりは悪いんです。参加者を調べてみると、一部は「タッチですこやか脳チェック」に流れていることがわかりました。
対面の事業で「のうKNOW」を使って感じたのが、ある程度お一人おひとりの時間に合わせられるのは良いなと感じています。集団検査ですとお一人が理解できなかったりすると、どうしても全体を待たせてしまうこともあります。「のうKNOW」はそういったことがないのが良いです。あとは学習効果ですね。何回かやっていると集団検査はどうしても覚えられる設問もあるので、ランダムにトランプが出る「のうKNOW」は学習効果がないところも良いと感じています。
実際に参加された方は難しかったという声もありますが、対面で実施したことで安心して受けられたといった声が多かったです。はじめはタッチパネルに不安を感じていた方も、来てよかったと言ってもらうことができました。
住民の皆様への広報・PR・声かけ方法、運用面で工夫された点を教えてください。
今回は市政だよりと、市役所のホームページに掲載しただけです。本来は回覧板が一番集客には効果的なんですが...。
回覧板を活用しなくても十分お申込みいただけたので、現状市政だよりとホームページで様子をみたいと思っています。おそらくですが、市政だよりに「気軽に脳の健康度を測ってみませんか?」と記載したネーミングが良かったのかなと思いました。
本事業を基にした今後の構想などあれば教えてください。
フレイル予防の講座や健康教育の場に参加する方へチェックを行うのもいいかなと思っています。希望する方に実施いただき、個別のフォローまでは難しいかもしれませんが、参考になるような資料をお渡しできればと思っています。
あとは地域包括支援センターが3カ所ありますが、高齢者が多いけれど、交通の便がやや悪く、福祉センターや保健センターに行きづらいという地域もあります。そのような地域では、イベント的に包括支援センターでチェックを受けることもできればよいかと思っています。また、各地域に出前講座に行くこともあるので、そういった機会にもチェック会ができるといいですね。
機器の問題など整備が必要ですが、今の事業も含めて、今後様々な利用方法を考えたいと思います。