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静岡県静岡市|認知症支援に特化した“場所”があることの強み 静岡市認知症ケア推進センター「かけこまち七間町」 ~ 街中の、誰もが気軽に立ち寄れる相談・連携・普及啓発拠点 ~

取材:2024年3月21日 静岡県静岡市「かけこまち七間町」

JR静岡駅から徒歩約12分、多くの人が行き交う中心市街地、静岡市葵区七間町(しちけんちょう)にある認知症ケア推進センター「かけこまち七間町」は、全国の自治体でも珍しい認知症支援に特化した活動拠点です。令和2年10月のオープン以降、“立地を活かした街中での相談”や全世代を対象とした普及啓発など、様々な認知症施策に取り組んでいます。令和6年度からは、関係各機関との連携のなかでその位置づけをより鮮明にするとともに、地域包括支援センターとは異なるアプローチの訪問支援活動を始めるなど、中心拠点としての機能のさらなる拡充に努めています。

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「かけこまち七間町」は、「認知症の本人・家族の支援」を行うとともに、全世代を対象として広く「認知症予防」や「認知症の理解促進」のための事業を展開する活動拠点です。

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「かけこまち七間町」の3大機能

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「かけこまち七間町」と地域包括支援センターとの機能・役割分担

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令和元年 「かけこまち七間町」開設の経緯

  • 「認知症施策推進大綱」を踏まえて
    「共生」と「予防」が車の両輪。
  • 「静岡市認知症予防企画会議」を設置(年4回実施)
    予防センターの開設を目指し検討が始まったが、「予防も含めた認知症の本人・家族を中心とした総合的な支援を行う 拠点」が必要となる。
  • 「認知症の予防に関する実態調査」の実施
    「認知症のチェック」や「認知症予防についての相談ができる場」についてのニーズが高いことを確認。
→ 困った人が気軽に立ち寄ることができるように、また、無関心層に情報を提供できるように、 中心市街地に拠点を開設。

「かけこまち七間町」で行っていること

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令和4年度 認知度向上のための取り組み

  • 地域のキーパーソンを招待するツアー
    自治会役員・民生委員を対象に、近隣の施設と「かけこまち七間町」を巡るツアーを企画。計20回実施し、多くの参加者に地元へ情報を持ち帰ってもらった。
  • 立地する商店街との連携
    七夕での短冊記帳台の設置、ハロウィンでの菓子の配布など、商店街のイベントに積極的に参加して市民と交流。
  • イベントの積極的な実施
    月平均15回のイベントを開催。
  • 休憩スペースとしての施設の開放
    イベント時間以外は施設を休憩スペースとして開放し、静岡市産のお茶(茶匠選りすぐり)も提供。相談員とのくつろい だ会話から相談支援につながるケースも。
→ 前年度比、来場者数約6倍(1万549人)、相談件数約3倍(412件)
→ 普及啓発の拠点としての地位は高めることができた。

令和5年度 施設の機能の拡充・専門性の向上

  • 高齢者福祉施策に長けた正規の保健師を配置
    相談業務や関係機関との連携の質の向上を図る。
  • 本人・家族の交流会の開催
    当事者支援の充実を図る。
  • 「かけこまち七間町」スタッフが「認知症の人にやさしい地域づくり」に協力
    施設を飛び出してまちづくりの事業に参加。
→ 『認知症のことは「かけこまち」に行けば何とかなる』が市民に浸透している状態を目指す。

相談員の手応え

認知症の早期における家族の戸惑いや本人の不安を受け止める

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高橋 和江さん
静岡市認知症ケア推進センター
「かけこまち七間町」相談員

「かけこまち七間町(以下、かけこまち)」の相談件数 の多くは事前予約によるものですが、何かの折にふらりと立ち寄ってくださった方との会話から相談に進むケースも珍しくありません。たとえば、「かけこまち」の入口に置いている認知症関連の冊子等を興味深そうに見られている方に、「ご家族に認知症の方や認知症が心配な方がいらっしゃるのですか」と声をおかけすると、「認知症の家族への対応に困っている。頭ではいけないとわかっていても、どうしても怒ったりしてしまう」といった悩みごとを口にされることがあります。そうした場合は、ゆっくりお話を伺い、接し方などをお伝えするとともに、認知症のVR体験をお勧めしています。“認知症の方の見えている/感じている世界”を疑似体験された方は、「あ、なるほど。本人は意味もなく大声を出しているわけではないのですね」と気づいてくださったりします。
ご本人が「自分は認知症ではないか」と心配して来られるケースも増えています。お話の内容を踏まえ、かかりつけ医の先生への相談をお勧めした方が、かかりつけ医から専門医療機関を紹介されたあと、再びここに相談にみえたケースもありました。「専門医療機関の受診日までだいぶある。それまでほうっておいてよいのか」と不安を抱かれていたのです。そうした方には、受診日までにできることをお伝えし、「かけこまち」で開催している脳を元気にするイベントや講座をご紹介するとともに、ご家族に認知症サポーター養成講座の受講をお勧めしたりしています。
このように、スポットスポットではありますが、何か新しい不安や困りごとが生じた際に相談に来ていただき、少し気持ちが軽くなったご様子で帰っていかれる姿をみていると、「認知症のことは『かけこまち』に行けば何とかなる」と思っていただけるようになり始めているのかなと手応えを感じます。

「かけこまち七間町」の目指す姿

『認知症のことは、「かけこまち」に行けば何とかなる』が地域に浸透!

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令和6年度以降の展望

中心市街地にある拠点施設ならではの展開

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石川 裕希さん
静岡市 保健福祉長寿局
地域包括ケア・誰もが活躍推進本部
認知症施策推進係 係長

「かけこまち」ならではの相談支援や普及啓発
「かけこまち七間町(以下、かけこまち)」に関する質問で多いのは、地域包括支援センター(以下、包括)とどこが違うのかというものです。どちらも相談機能を持ちますが、「かけこまち」は人が集まる市街地にあり、誰もが気軽に訪れやすいという特徴があります。実際、包括の存在を知らない方もふらりと立ち寄ってくださったりします。
相談内容としては、複雑で込み入ったケースというよりも、「認知症のことがちょっと気になる」というご本人やご家族からの相談が多い傾向がみられます。自分の状態を気にしている方に対して、「かけこまち」は「のうKNOW」を常設しているので、「まずここで脳の健康度をチェックしてみませんか」とその場で確認の機会を提供できることも、包括等他の相談窓口にない「かけこまち」の強みでしょう。定期的に脳の健康度を確認しに来られる方もいますし、あわせて身体機能のチェックも行えます。 
また「かけこまち」は、静岡市に1カ所の拠点として、各圏域単位で実施するよりも効果的と考えられる普及啓発、情報発信などの面でも貢献していければと考えています。たとえば、全世代が対象ということで、夏休みにはジュニア認知症サポーター養成講座を開催していますし、認知症VR体験機器の導入など新しい流れも拠点のほうが取り入れやすいでしょう。人が多く集まる中心市街地にある拠点として、『「かけこまち」に行けば、認知症についての多様な支援や情報とつながることができる』ということが市民に浸透するよう、関係機関との連携を強化しながら、施設のさらなる認知度向上を目指していきたいと考えています。

令和6年度からの新たな取り組み、“コツ”を伝える訪問相談支援
令和6年度以降は、「かけこまち」から相談員が各地域に出向いて相談支援を行います。この訪問相談支援においても、包括の機能との住み分けが前提となります。たとえば、ご家族がすでに困り切っていたり、長期にわたる支援が必要だったりするケースは、包括で対応していただくことが望ましいでしょう。これに対して私たちは、ご本人が認知症の診断を受け、ご家族による介護が始まる段階─不安があり、困りごとが出てくる段階でのアプローチを主に想定しています。それを知ることでご本人が楽になり、ご家族の負担も減るような“生活のコツ”を、「かけこまち」の相談員が地域に出向いてアドバイスしてくる、といった訪問支援を展開していきたいと思います。

“場所”があるからアイデアを実践できる
「かけこまち」の運営を通じて強く感じるのは、認知症支 援に特化した拠点、“場所”を持つことの強みです。何か認知症に関する事業案を思いついたときに、実践する拠点があることで、「まずここでやってみよう!」というアクションが起こせます。たとえば、普及啓発の新しいイベントを「かけこまち」でやってみよう、新しい機器を「かけこまち」に置いてみよう、大学や民間企業が開発した認知症の予防策や支援策について、「かけこまち」に参加者を集めて実証実験をしよう、といった取り組みが実行可能です。「かけこまち」という“場所”があることイコール、「新たな認知症施策を実現しやすい環境」になっているといえるでしょう。

「かけこまち七間町」 があることの強み

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認知症予防プログラム

認知症に特化した施設がある=何か事業案を思いついたときに、実践する拠点がある
“それ、「かけこまち」でやってみよう!”

  • イベント・・・「かけこまち」でやってみよう!
  • 機器・・・「かけこまち」に置こう!
  • 認知症予防プログラム・・・「かけこまち」に参加者を集めて実証実験をしよう!
→ 「かけこまち七間町」があることで、『新たな認知症施策を実現しやすい環境』となっている。

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脳の健康度チェックは、体重や血圧のように気軽に自身の認知機能の状態を知ることを目的としています。「脳の健康度チェック事業」ではチェックそのものの実施に加え、地域住民の方々への広報活動、チェック後のフォローアップまで含めた取り組みをご支援いたします。ぜひ貴自治体においても何なりとご相談ください。
事業に活用する、脳の健康度チェックツール のうKNOW®(ノウノウ)
「のうKNOW」はブレインパフォーマンス(脳の健康度)のセルフチェックツールです。トランプカードを使ったゲーム感覚の4つのチェックで「記憶する」「考える」「判断する」などの脳のパフォーマンスをチェックできます。テスト結果では同年齢の平均と比べた、脳の健康度を確認できます。定期的にチェックすることで、以前の結果と比較することも可能です。
※「のうKNOW」は疾病の予防や診断を目的としたものではありません。
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