鳥取県鳥取市|認知症になってからも暮らしやすい鳥取市をともに創る ~鳥取市認知症施策推進計画策定の取り組みと展開~

演者:鳥取西地域包括支援センター 認知症地域支援推進員 下田 志津加 様
鳥取市中央包括支援センター 認知症地域支援推進員 金谷 佳寿子 様

セミナー開催日:2026年4月21日(記事作成日:2026年6月30日)

■ 概要

鳥取市では、認知症本人の声を出発点に「鳥取市認知症施策推進計画」を策定し、計画づくりにとどまらない地域での実践へとつなげています。本人、行政、専門職、企業、地域住民がともに参画し、「認知症になってからも暮らしやすい地域」をどのように実現していくかを考え、取り組みを進めてきました。
本事例は、認知症施策を計画としてまとめるだけでなく、その後の会議、研修、まち歩きなどを通じて、地域の実践へ展開している点が特徴です。計画策定と地域実践を一体で進めるモデルとして、他自治体にとっても参考になる取り組みです。

■ 高齢化が進む中での認知症施策

鳥取市は、人口177,412人、高齢化率30.9%の中核市です。市内には18の日常生活圏域があり、11か所の地域包括支援センターと、11名の認知症地域支援推進員が配置されています。
同市では、すべての市民が認知症を「自分ごと」としてとらえることを重視しています。そのうえで、「新しい認知症観」の理解と実践を軸に、令和7年3月に「鳥取市認知症施策推進計画」を策定しました。
この計画の背景には、認知症になってからも、自分らしく暮らし続けることができるまちを目指すという考えがあります。

■ 計画の出発点は「本人の声」

鳥取市の計画策定で大切にされたのは、「ともにつくる」プロセスです。
行政が計画を作り、関係者に説明するのではなく、認知症本人や家族、医療・介護関係者、企業、買い物や移動等の暮らしに関わる多様な人が企画段階から参画しました。
特に重視されたのが、認知症本人の声です。
アンケートや聞き取り、本人ミーティングを通じて、「自分らしい暮らし」を続けている事例を集め、日常生活の中にある「いいね!」を共有しました。そして、その暮らしを続けていくために、何が必要なのかを整理していきました。
そこで見えてきたのは、「できなくなった」ことに目を向けるのではなく、「どうすれば続けられるか」を一緒に考えることの大切さです。

本人が自分の思いを伝えること。周囲がその思いを受け止め、自分ごととして考えること。計画策定そのものが、関係者の意識を変えるプロセスとなりました。

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補足:本人ミーティングとは、認知症の当事者が集い、本人同士が主になって、自らの体験や希望、必要としていることを語り合い、自分たちのこれからのよりよい暮らし、暮らしやすい地域の在り方を一緒に話し合う場です。鳥取市では企業も巻き込んだ活動を行っています。

■ 計画で終わらせない、実践への展開

鳥取市の取り組みは、計画を策定して終わりではありません。
計画策定後も、毎月の認知症地域支援推進員連絡会を通じて、国の方針や市の計画を踏まえた行動の検討、グループワークによる認識のすり合わせが行われています。
たとえば、初回相談の場面で、本人ミーティングなどのピアサポートの情報を伝えるかどうかをテーマに議論しました。
「自分は認知症ではない」と話す方に対して、どのタイミングで、どのように情報を届けるべきか。話し合いを重ねる中で、本人にとって有益な情報は早期に届けることが大切だという共通認識が生まれました。
これは、専門職自身が、認知症に対する考え方を見直す機会にもなっています。

■ 本人を起点にした圏域での実践

鳥取西地域包括支援センターでは、圏域研修会を開催し、具体的な事例をもとに地域でできることを話し合いました。
テーマは、「認知症になってからも自分らしく暮らせる地域をどうつくるか」。
研修では、認知症のあるAさんの事例をもとに、本人の強み、必要な支援、地域でできることを多職種で検討しました。
参加者からは、「本人の思いを知ることが大切」「できないではなく、どうすればできるかを考えたい」「周囲が先に諦めないことが必要」といった声があがりました。
Aさんの事例を通じて、本人を中心に、事業所と地域がつながる重要性が共有されました。

■ 「まち歩き」で見えた地域の力

さらに、認知症になってからも安心して外出できる地域を目指し、「まち歩き」を実施しました。
認知症本人、家族、地域住民、事業者、行政が参加し、実際に地域を歩きながら、道路や店舗、見守りのポイントなどを確認しました。
歩いてみることで、普段は気づきにくい地域の課題や可能性が見えてきます。
参加者からは、店舗だけでなく地域全体で見守る視点の大切さ、車で通るだけでは気づかない日常の課題、挨拶や関係づくりの重要性など、多くの気づきが生まれました。
まち歩きは、本人の声を地域づくりにつなげる実践の場となりました。

■ 導入のポイントは「共創」と「展開力」

鳥取市の取り組みから見えてくるポイントは、計画を行政だけで作らないことです。
本人や地域とともに考え、本人の声を起点に具体的な施策へ落とし込むこと。そして、計画策定で終わらせず、圏域単位の研修やまち歩きなど、身近な場で実践へ展開していくことが重要です。
会議や研修、地域での対話を重ねることで、関係者の認知症観も少しずつ変わっていきます。
鳥取市の取り組みは、「計画」そのものよりも、計画をつくるプロセスと、その後に地域で活かす場づくりに大きな価値があります。 

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■ まとめ

鳥取市は、認知症施策を「計画策定」から「地域実践」へとつなげ、本人の声を起点に地域全体を巻き込む取り組みを進めています。
行政、専門職、地域住民、企業がともに考え、ともに動くことで、認知症になってからも暮らし続けられる地域づくりを具体化しています。
本事例は、計画を“つくる”だけでなく、“活かす”へと転換する実践モデルです。認知症施策を地域に根づかせたい自治体にとって、示唆に富む取り組みといえます。

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